もう見られない…【美瑛町シラカバ並木消失】環境保護と観光の未来を考える


2025年1月14日朝国内外から多くの人が訪れる美瑛町の人気観光スポット、「セブンスターの木」近くにあった約40本のシラカバ並木全てが伐採されました。
観光客だけでなく地元住民や多くの写真愛好家に愛された場所が消えてしまったのは本当に悲しい。
今回は増え続けるインバウンドによるオーバーツーリズム問題について、日本や北海道など人気観光地が取り組むべき課題や未来について観光立国として成功しているフランスを例に考えてみました。
目次
オーバーツーリズムとは?
近年、外国人観光客の激増に伴い頻繁に耳にするようになった『オーバーツーリズム』
『オーバーツーリズム』とは観光地や地域に観光客が過剰に集まることで、地域住民や自然環境、観光客自身にも悪影響を及ぼす状況で、日本語で「観光公害」とも呼ばれています。
オーバーツーリズムによる問題点としてよく取り上げられるのは観光バスやレンタカー急増による交通渋滞や路上駐車、ゴミの放置や騒音、進入区域への侵入による自然環境の破壊や様々なマナー違反や 地域住民とのトラブルなど。
インバウンドの増加と
経済的メリット

2024年の訪日外国人数は約3,680万人で過去最高とコロナ以前の2019年前を上回っています。
現在の日本は少子高齢化が進み、それに合わせ国内消費額も減少し続けています。
国が掲げるこの問題の解決策の一つが、国内で減少する消費額をインバウンドによって補うというもの。
インバウンド需要による最大のメリットはなんと言っても経済効果。
再訪が多い北海道

上の図から訪日10回以上×年収600万以上の人の多くが北海道へ多く訪れているのがよくわかります。
観光客の多くは宿泊費、飲食費、交通費を必ず使い更にお土産やショッピングによる消費額は2019年ではなんと5兆円!!
一見して経済的メリットばかりに目が行きがちですよね。
しかし今後増え続けるであろうインバウンドによるデメリットはなにが考えられるでしょうか?
昨年【オーバーツーリズム】について書いた記事。
中国に対しての
ビザ発給要件緩和措置
年々増え続ける外国観光客。
外務省は昨年2024年12月25日中国人への日本に滞在する際のビザの発給要件の緩和措置を発表しました。
- 富裕層の一部(家族を含む)が対象➔有効期限10年間のビザの新設
- 団体旅行向けビザの滞在可能日数が15日➔30日に
- 65歳以上の人のビザ申請時の在職証明書の提出が不要に
このことに今後より多くの中国人観光客が訪れることが予想されます💦
北海道民としてはとっても複雑。。
以前のように”爆買い”の光景が戻ってくるかもしれません😩
ビザ発給要件緩和で
起こりうる問題

ビザ発給要件の緩和により、観光業の活性化に繋がることは間違いありません。しかし一方で地域や社会にも様々な問題をを引き起こすことが考えられます。
- オーバーツーリズムの加速する➔観光地の混雑や環境破壊、住民生活への影響が今まで以上に深刻になる。
- 安全面のリスク➔滞在期間の延長や管理の緩和により、不法滞在や犯罪の増加。
- 文化的摩擦➔地域の文化や習慣とのズレが摩擦を起こし、今まで大切にされてきた文化やアイデンティティが失われる。
- 雇用環境の悪化➔観光業の労働需要は増加するが地方での人員人材不足、それによる過重労働や外国人労働者の雇用が増加する一方で地元住民の雇用機会が減る可能性。
これら多くの課題に取り組むには、観光地の管理体制の強化や地域住民と観光客の共存を目指した施策が必要不可欠。
そこが一番難しんですけどね。。

日本政府は、2030年までに訪日外国人旅行者数を6,000万人に増やすことを目標としています😱
今後も訪日観光客の増加を継続しながら、観光インフラの整備や地域の魅力向上や人材の確保等様々な取り組みが必要。
では日本が観光立国として訪日外国人を受け入れるため一体何が必要なのか?
フランスの成功例からそのカギや課題が見えてきます。
観光立国としての成功例

観光客数世界一!
人気観光地フランス
世界で最も多くの観光客が訪れ観光立国として30年以上にわたって世界一に君臨する観光立国のフランス。
2024年にはオリンピックなどの国際的イベントも重なり、訪れた観光客はなんと1億人を突破しました。
観光立国としての成功理由は様々ありますが、例えば観光資源ならヴェルサイユ宮殿、エッフェル塔、凱旋門など数々の歴史的モニュメントやルーブルやオルセーの美術館など、歴史的にも文化的のも価値の高い観光資源をフル活用!
パリを中心としたアートやファッションの発信地としての圧倒的なブランド力。
またワインや美食文化などの地域性を活かした地方観光へのプロモーションなどがあります。
フランスの美食やワインを活かした観光

フランスは、美食やワイン文化を活かした観光で世界的に大きな成功を収めています。
ではその取り組みにはどのようなものがあるのでしょうか?
- ワイン観光ルートの整備
- ボルドーやブルゴーニュなどでワイナリー巡りや試飲体験などを提供し文化体験としての観光を実現。
- 世界遺産を活用した観光振興
- ワイン産地の世界遺産登録を観光プロモーションに積極的に活用し、国際的な認知度を向上させています。
※フランスには文化遺産44件、自然遺産7件、複合遺産2件の、合計53件の世界遺産が登録されています
- ワイン産地の世界遺産登録を観光プロモーションに積極的に活用し、国際的な認知度を向上させています。
- 美食イベントの開催
- リヨンを中心に、伝統的な料理やミシュランレストランを楽しめるガストロノミーツーリズム
※ガストロツーリズムとはその土地の気候風土や歴史、文化などによって育まれた職を楽しみながら食文化に触れることを目的としたツーリズムのこと。
- リヨンを中心に、伝統的な料理やミシュランレストランを楽しめるガストロノミーツーリズム
- ラグジュアリー観光の提供
- シャンパーニュ地方では、高級感のある特別な体験を提供し、富裕層観光客を呼び込む。
- マーケティングの強化
- Atout France(フランス観光開発機構)が、SNSや国際イベントを活用してフランスの魅力を世界に発信。
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- Atout France(フランス観光開発機構)が、SNSや国際イベントを活用してフランスの魅力を世界に発信。
- 地元住民との交流を重視
- 地元市場での買い物や料理教室を通じて、観光客がフランスの文化を深く学べる体験を提供。
- 地元市場での買い物や料理教室を通じて、観光客がフランスの文化を深く学べる体験を提供。
ラグジュアリー観光とは?
- プライベートワイナリーツアー
小規模から大手まで、ぶどう畑やセラーを巡りながら試飲体験を提供。 - ラグジュアリーホテル
シャトーを改装した宿泊施設で贅沢な滞在を提供。 - グルメ体験
シャンパンと地元料理のペアリングを楽しめるミシュラン星付きレストランが多数。 - 特別イベント
フェスティバルやガーデンパーティーで特別な体験を提供。 - 富裕層向けサービス
ヘリコプター移動やプライベートガイドツアーなど特別サービスを用意。 - 世界遺産活用
ユネスコ世界遺産登録を観光プロモーションに活用し、地域全体をブランディング。
高級スパークリングワインとして知られ、確固たる地位を築いているシャンパーニュ。
その「高級感」や「幸福」の象徴としてブランディングに成功した例と言えます。
またフランスは地域性を活かした持続可能な観光も意識しつつ、国際的なブランドとして確固たる地位を確立しました。
地域ブランドを活かした戦略はシャンパーニュ地方へ富裕層観光客を惹きつけ、文化保護と観光を両立させている見習うべき国なのです。
北海道で見習うべき取り組み

北海道では豊かな自然、歴史や文化、特産品を活かしながら、シャンパーニュ地方の成功例を参考に次のような施策も可能ではないでしょうか?
具体案で言えば特産品ツアーなら北海道産ワインや地酒を中心に農場収穫体験を合わせたツアーなどはすでに実施している市町村もあります。
また、高級宿泊施設や温泉リゾート。
豊かな食にめぐまれたグルメ観光で 海鮮や地元食材を活かした料理教室や高級グルメ体験。
地域文化イベントでは 外国人観光客にすでに人気の雪まつりや雪像作りやアイヌ民族の文化体験など。
富裕層には向けてプライベートチャーターや専属ガイド付きアウトドア体験など。
また世界自然遺産知床や人気の富良野や美瑛を中心としたエコツーリズム、景観保護型観光。
また最も強みともいえる北海道の特産品を国際市場へ発信し、ブランド力と認知を更に向上させる。
※エコツーリズムとは?
地域固有の資源を保護しながら、その価値や大切さを観光客に伝えることで、地域社会の活性化や環境保全につなげることです
※エコツアーとは?
自然に触れて動植物の生態を観察したり、地域ならではの文化を体験したりするなど、さまざまな目的と手法。
今後懸念される深刻な問題
1. インフラ不足と地域間格差
北海道は多くの観光客が訪れる人気エリアとそうでないエリアに格差がさらに広がる可能性が。それに公共交通のインフラ不足が深刻になり地元住民の足にも影響が出ています。
2. 環境への影響
観光客増加による自然環境への影響や農業被害や景観破壊。
美瑛の景観は観光客の行動によって哲学の木やシラカバ並木が既に失われる事態となっています。
3. 地元住民とのトラブル
観光客増加による生活環境の変化や迷惑行為。
映画のロケ地で知られる小樽で、先日は死亡事故も起きてしまいました。
4. 富裕層向けの施策が
住民の生活を圧迫
富裕層向け施策と一般観光客の格差が広がり、外資が多いニセコなどでは高級リゾートや特別ツアーは必しも地域全体の利益には繋がす、地価や物価が高騰し一般市民の生活を圧迫し暮らしにくくなっています。
5. 観光人材の不足
各国の外国人観光客に外国語対応できる人材や高級サービスに対応できる人材の不足。
特に 富裕層観光客の期待に応える質の高いサービスが提供できないなどの問題。
6. 地域文化の過剰商業化
地元文化や伝統が観光向けに改変され、本来の価値が失われる。
持続可能な観光資金の確保へ
京都市は、観光客の増加による市民生活への影響や文化財の保護、オーバーツーリズム対策のため、宿泊税の引き上げを検討しています。
具体的には、2026年3月から宿泊料金に応じて税額を引き上げ、最高で1泊あたり1万円とする案が提示されおり、この税収は、文化財の修繕や観光課題の解決に充てられる予定。
「京都市が宿泊税の引き上げを検討、文化財修繕や課題解決に活用」
情報ソース:Yahoo!ニュース
どの国も抱えるジレンマ
オーバーツーリズムが抱える問題はなにも日本や北海道だけではありません。
大きな経済的効果をもたらす一方で各国それぞれに同じようなジレンマを抱えています。
混雑緩和や観光の質の見直し、需要に応じ対応可能な人材の確保や育成、宿泊税や観光税、入国税等を導入し公平に税収を分配すべきだと思います。
それでも高いお金を払ってでも日本を訪れたいと考える外国人観光客の方が圧倒的に多いと思います。
住民の我慢に上に利益が
成り立ってはいけない
一番問題だと思うのは各国共通しています。
それ地域に暮らす人たちの生活が脅かされ、我慢の上に利益が成り立ってはいけないということ。
住民が納得いく観光の形や、観光収益が地元に還元される仕組みづくりは急務だと思います。
これからの取り組み
マナーの周知、エコツアーなどの取り組み、まだ注目されていない地方自治体の魅力を発掘、ブランディングし、全国各地に観光が分散されることにより混雑緩和も期待できるでしょう。
出来ることはまだまだきっとあるはず。
まとめ
今回はインバウンドについて、北海道はもとより日本が抱える課題やこれから取り組むべき施策について考えてみました。
私自身大好きな北海道。
四季がはっきりしていて、自然が豊かでなにより北海道はおいしいものの宝庫です。
そんな魅力あふれる北海道へ世界各国からたくさんの人が訪れ感動して喜んでくれて、地域経済も潤って。。。
そんなWINーWINな形が理想なのかもしれません。
簡単ではないけれど少しづつでも理想に近づいていく為に出来ることはある!
個人的には目先のインバウンドによる経済消費ばかりに目を向けず、今の少子高齢化のままだと5年後10年後30年後、地方活性はおろか、消えゆくであろう自治体が北海道にはたくさんあって観光客を受けいれることすらできなくなっていくということ。
それにはまず、これからの日本、北海道を担っていくであろう子供たちに未来を託すしかないのです。
ひいてはまず少子化対策が急務であると考える私です。
しかし✋
もうすぐ未来の北海道を背負って立つ(大袈裟w)孫二人が生まれるにあたり、今後の日本、北海道の未来が明るいものであって欲しいと願うばかりです。
参考資料:日本政府観光局・ATOUT FRANCE
引用:PRTIME,Yahoo!ニュース
画像:写真AC